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  【第4回】思い出の犬との初猟 2005/9/23
 
 

何時もながらの30年も前のお話で恐縮ですが、私がまだ猟欲も強く、エネルギーも有った頃です。所有するポインターが1頭しかいない為、子犬を1頭入舎させようと思い立ちまして色々な血統を考えておりました。

 強烈な気力を持つと言われておりました米国のタイニー・ワーフーやマニトバ・ラップ。はたまたメジャー・レキシントンボーイと言う様なフリー・フォー・オール(今で言う格闘技でしたら総合格闘技の様に何でも来い!と言う様な強い猟欲を持った犬達の競技会です)ステークスで競う犬たちの系統か、もしくはオクラホマ・フラッシュやパラディンズ・ロイヤル・フラッシュの様なオール・エイジタイプ(野球で申しますと米国のメジャーリーグの様なもので最高峰の競技会で、出犬されます犬たちもフリー・フォー・オールの様な強さも持ち、なおかつ垢抜けた訓練も受けた犬たちです)の中から素材を見つけるかを迷いました。

シューティング・ドッグクラス(少しランクの下がるステークスです)の犬でしたら訓練も楽か?とも思いましたがオープンシューティングクラスの犬でも、ましてやアマチュアシューティングで戦っているくらいの犬のクラスは欲しいと思った事は有りませんでした。

 現在は基準が変わっているかも知れませんが、その頃の米国の猟野競技会ではそれまでにすでに何らかのかたちで選抜された幼犬達がダービー(若犬)に上る際は素質の無い犬はシューティングドッグクラスかガン・ドッグクラスに落とされます。もしくは競技会などには参加する事無く一生を終えます。


 シューティングクラスに入った犬の中でもアマチュアシューティングクラスとオープンシューティングクラスが有りますが、犬の力量は天と地ほどの差でオープンクラスが勝ります。これはどの様なスポーツ競技でも勿論言える事です。たまにオープンシューティングの犬で、その後に実力が付きダービーやオールエイジに返り咲く犬がいるらしいですが、本当に稀な事です。

 この様に枝に落ちずに素質の有る幼犬は最初からダービーに上れますが、良い犬はオープンダービーで覇を競います。そうでない犬はアマチュアダービーで頑張ってます。そして資質と力が有り、訓練され成長した良い犬たちがオール・エイジのステークスで真価を問います。

 オール・エイジにもアマチュアステークスは有りますが、偉大なのは勿論オープン・オール・エイジです。これがメジャーサーキットの犬たちです。またそんな枠を飛び越えたところにフリー・フォー・オールのステークスが有った訳です。

 フリー、フォー、オールステークスはガンドックで有ろうがシューティングで有ろうが、はたまたダービーや

オールエイジで頑張っている犬がオープンでもアマチュアでも立場や勝歴など問題にせず、自信が有るなら出て

来い!ガタガタ言わずに本当の力を見せて見ろ!と言う様な強烈なイベントです。これでは誰でも出られてステークスの価値は下がらないか?と考えますが、嘘やはったりの効かない競技会ですから良い犬以外は出て参りません。

野に埋もれた名犬達が嬉々としてその実力をオーナーやハンドラーと共に私たちの目を楽しませます。

実際に世の中は広く、オープンオールエイジの実力に勝る事は有っても決して劣るものではないとの事です。

 良い繁殖者やオーナー、良い訓練やハンドラーに恵まれなく、実際には良い素質や蓄えた力を持ちながら日の目を

見れなかった犬たち。そのまま朽ち果ててしまう愛すべきクラスバードドッグ。その様な犬たちの為にフリー・

フォー・オールステークスを設けた海の向こうの大先輩達には熱い熱い感謝と敬意を表したいと思います。
勿論オープンオールエイジの犬も沢山出場しますので、真髄はここに有りきやの大イベントです。


 この様な事を言っておりますと米国の犬がナンバー・ワンの様で、日本や英国のポインターはどうなのか?と

叱られますが、その頃の私の周りに於きましては「良い犬を持ちたいものだ」と言う欲求の素材に於いては米国の

ポインターが一番でした(小生の好みの問題かも知れませんのでなにとぞご勘弁下さい)。

 結局のところ、当時売り出しのテキサス・シルバー・スパーやミラーズ・ホワイト・クラウド、チェロキージェークと言ったオールエイジチャンピオンの血統の子犬を関東より買い入れました。ところが付き合いの有る愛媛の方から 「子犬を一頭送ったから豊中の空港まで引き取りに行ってくれ」
と連絡が有り、思いもせず同時に2頭の幼犬が入舎しました。偶然ですが誕生日が同じで、共に生後47日でした。

  四国から来た子犬はコテコテのパラディン系統で、吃驚するくらいによく食べて 寝ている子犬でした。関東よりの子犬は、これも食べる量は決して負けませんが、 四国の子犬と会ったその日より朝から晩まで兄弟の様に寝ている相手にじゃれ合っ ておりました。誰が見ても同胎犬だと思っておられた様で、うちのカミさんも

 「うまい事言って、最初から2頭のつもりで同じ所から買ったんでしょう?」


 と言われた程です。両犬とも牡でかたやレモン、もう一頭はオレンジの子犬でした が、色々な事を私に教えてくれた犬たちでした。

 現在の様に便利な訓練道具や訓練方法の情報も無い時代で苦労しましたが、チェッ ク・コードや帽子、パチンコなどを使い、はたまた履いている長靴を投げつける様 な事も有りましたが、素人の小生には非常に面白い時間を過ごしました。

 ただ犬の為にはどれだけプラスになったかは定かでは有りませんが。

  さて、この二頭の子犬の性格はと申しますと、両犬ともにポインター特質の非常に性格が明るく、おおらかなタイプで、ともすれば四国から来た子犬の方が私との協調性が少しは高かった様です。常に私を見て意識し、私を喜ばそうとしている様でした。それがこの犬の持って生まれた喜びの様なところでした。しかし両親から引き継いだ猟欲と気力は中々のものです。

また関東の子犬はずば抜けた気力が有りましたがともすれば協調性に欠け、わが道をまっしぐらのタイプでした。

 同じ胎から生まれた兄弟犬でもこれくらいの違いは当たり前で、ましてや誕生日は一緒でも出自や血統がちがうと当然の事です。しかし兄弟の様に育つ二頭ですが、同じ様な訓練ではいけません。やはりその犬に合った訓練を目的の為には一頭一頭してやらねばならないのです。

  毎日、長時間にわたり訓練をしましてもその犬に合った訓練をしなければ手抜きです。決して自己満足では

 いけません。毎日が試行錯誤の繰り返しで、

(これで犬の為になっているのだろうか?)
と迷ったものでした。犬はドンドン成長しますが、私がついていけません。

よく(犬を見ればそのオーナーの姿勢や好みや能力がわかる)
昔からよく 言いますが、自分の求めているものとのギャップや本当にこれで良いのか?と毎日自己との対話と犬との対話でした。半年を過ぎた頃には猟が始まるシーズンになってしまいました。それまで

 「一にレンジ、二にレンジ、三、四がなくて五にスピード、あとはそれからの話」
と言った非常に判りやすい自分の好みのスタイルの為、その様に半年間運動をして参りましたので広大なレンジを素晴らしいスピードで走り回っておりました。ただ、自然に雉に当りだして鼻を使う様になり、すこし動きにムラが出ますがこの様な事は時間が解決します。

  「ウワー!これで鳥に強かったらダービーに上れる犬やー!」
毎日がこの様な調子で楽しいものです。
両犬ともハイヘッド・ハイテールで走る姿を見て、心の中は有頂天です。友人が

 「あんなに早く走っていて鳥の臭いがとれるんかいな?」と言いますが、

 「うん、あのスピードで臭いをとる自信が有るから走っとるんや。スピードの無い犬は自分の鼻に自信がないんや、ゆっくり走っていて臭いをとる犬なんかはあまり魅力がないと言うか美しさがないな」

  その頃の私は張り切っておりましたが、運が良かったのかこの二頭は後になって鳥にも圧倒的な強さを見せて

 くれました。

  と言う訳で猟が始まったのですがこの頃の子犬の状態は、四国から来た子犬は

 少しばかりの猟欲も出ておりまして平気で2〜300メートルのレンジを狩ってお りました。
 (よく自分の犬は5〜600メートル程を狩ると自慢気に言う方がおられますが、 その様に離れると全く犬など見えません。せいぜい視野に収まっているのは300 メートル止まりです)

 しかしまだまだ幼い為に猟欲が途切れ、遊びが入ります。そうなる前には捕まえ

 てしまいます。遊びを覚えさせると猟犬は駄目です。また

  「気力の強い犬は少し疲れさせた方が言う事をよく聞く」
 などと言われますが、絶対駄目な様です。疲れさせると反対に言う事を聞かず、訓 練も入りません。協調性も有りましたのでゆくゆくは猟欲が強くなると同時に呼び を入れてゆっくりと訓練をして行こうと言う状態でした。

  関東の子犬は何にでも興味を示し、特に動く物や空を飛ぶ物には目がない様で、

 レンジは無限でした。地面の続く限りは前へ進み、バックキャスを踏まず何処までも行ってしまいます。個体差なのか、血統がそうさせるのか判りませんが、とにかく凄いスピードで真っ直ぐと何処までも行ってしまいます。猟欲はまだ発芽しておりませんので猟欲が出るとうまく訓練出来るものと考えておりました。ただただ遊びで何処までも行ってしまうのでしょうが、何をしましても非常に判りやすい犬で

 (フリー・フォー・オールの犬とはかく有りなん)と思えて先々が楽しみでした。元来犬は人間の様にハッタリや大きな事は言いません。その時々の姿がその時点での犬の持っている実力の全てなのです。

 この様な調子ですからまだ生後半年ちょっとで実猟に使おうとは思ってはいませんでした。しかし始めての猟場で引いてみるのも一興と考え、北陸まで連れて参りました。一応オモチャのピストルの音は聞かせて有りますので猟銃の音に吃驚する事は有りませんが、午前中は成犬で猟をしましてゆっくりと昼食を済ませ、子犬達の為に誰もいない猟場へと車を走らせました。

 とある山のふもとに有る村落の端で車を止めますと、左手に山並みが続き、はるかずっと正面には北陸高速道路が見えます。そこまでは田や畑で見渡す限りの平場です。あっちにぽつり、こっちにぽつりと雉が居そうなオブジェクトが有ります。雉猟のロケーションでは子犬にぴったりの猟場でした。何時も兄弟の様に訓練をしておりました子犬ですが、その日の調子に依りまして片方が弟、もう一方が兄貴に見えます。それは日毎に変わるものでした。雉が出るとは思いませんが一応銃を持ち、関東の犬を出しました。

 スタートダッシュよろしく左の山裾をガンガンと前へ狩って行きます。鳥が出ようが出まいが見ているだけで幼犬の割には素敵な刈り込みです。相当前まで刈り込みましてそのまま左の低い山に突っ込みましたがそのまま30分ほど行方知れずです。正味の30分ですから長い時間です。それまでに指示を出したりしてはおりましたが駄目です。しかし幼犬のくせに始めてのフィールドで物怖じせずの狩り込みには大変満足した次第ですが、漸くにチェックして
車まで戻る途中に手押し車に鍬を乗せて歩く老婦人に会いました。

 老婦人 【 何をしてなさるんけ? 】

 小生  「猟にはならない子犬ですが、雉が居ないかと思ってやっております」

 関東の子犬をケージにしまい、四国の犬を出しながら答えますと

  【 ワシが今から行く所には何時も雉がおるが、作物に悪さばかりするから獲って欲しいがなァ 】

  「こいつも子犬ですから獲れるという自信は有りませんが何処ですか?」

 【 15分ほど歩くがついて来るかの。それより今出した犬はさっきの犬と兄弟け?二つとも放すと何時も一緒に遊びよるんじゃろ? 】

 「まあ兄弟の様ですが違います。まだまだ子犬ですから同時に放すと一緒に走ったりしますよ。でも早くもっと

自主性が出て我勝手になって欲しいんですけどね」

 【 ワシの息子たちはお互い五十を過ぎても何時も兄弟喧嘩ばかりしておるが、犬の方が仲がいいなァ。親としては仲が良いのを何時もみていたいもんじゃがな。あんたさんも兄弟さんはおられるんけ? 】

 「ボクは一人です」

 【 じゃあこの犬達の兄さんじゃな 】

 「いえいえ、ボクは結構幼稚な人間ですから私の方が弟みたいなものかも知れませんよ」

 【 犬は嘘をつかないからいいと言う人がおってな、近所でもたくさん飼ってられるわ 】

 「いやあ、そんな事は無いですよ。犬は大嘘つきですよ。何時も訓練をして、もう覚えたと言う顔をしますが

  猟野に出ますと訓練も何も忘れて平気で勝手な事をします。ハッタリは言いませんがよく私を騙しますよ」

 【 そんなもんかいの〜、でも面白いの〜 】

 「騙したり嘘をついてる気は無いみたいですがね」

 【 アッハッハ。そんな事を言ってるうちに着いたわ、ここじゃ! 】

 そこは畑の真ん中で細い小川が流れ、それに添って低いボサが有り、同じ様に老婦人が丹精を込めている小さな畑も有ります。どうやら此処らしいのです。

 【 雉はなァー、鶏の様に首を伸ばして届くところの物はすぐに突っつくんじゃー。みんな駄目にしてしまうので  懲らしめてくれや 】

 「頼りにならん犬ですが、ボクも雉を見たいので犬を放して見ます」

 やっと出番が来たと思っているのか、コードを引っ張る四国の子犬を放しましたが、途端に10メートルほど走った所でいきなりのポイントです。慌てて銃に3発込めました。

 【 あれは何しとるのけ? 】

 「雉がおるんですわ、撃たしてもらいますが吃驚しないで下さいよ」

 こちらも声が上ずっております。笛の一発で突っ込み、雉がフラッシュします。初矢を外し、二の矢でヒットしましたが手負いなのか畑の真ん中でバタバタとしております。これは噛ましてやるのには都合が良いと犬を見ますと、最初の雉がフラッシュした3メーター程前でまたポイントです。驚いて気を取り直し二発の弾を込めて笛です。同じ飛行線で飛んだ雉には一発で雑巾落としでした。最初に落としてバタバタとしている雉を咥えて嬉しそうに私の所へ
持って参りましてまた、次の雉も持って参ります。

 飼育している犬の初めての猟果にはどんなベテランでも感激しますが、若い私も非常に興奮しておりました。

 「お陰さまで二つ出まして、二つとも獲れました。有難う御座いました」

 【 ふーん、そうやって獲るんけ。今日も二つともおったんじゃな 】

 「ここには何時も二つ居たのですか?」

 【 うん、夏を過ぎて生まれた二番子やな、普通だったら雄雉同士なら兄弟でも縄張り喧嘩して一匹づつになりよ  るが、まだ若い雉だから雄同士で仲良く何時もここで悪さしもって遊びよったんじゃ。寒くなって雪が来ても二  番子は、よく雄同士でも春が来る前まで一緒におるんじゃ 】

 「はあ、そうですか」

  【 ここで悪さしよる時はわしが畑に来ると吃驚して向こうの方に見えてる山裾まで一気に飛んでいきよるが、しばらくすると残った一匹が先の雉と同じ所に向かって飛び立ちよるよ。その時はわしが吃驚するがな。ここで何時も遊びよって、夜はあの山で寝てるんじゃな。今あんたが獲った二つ目の雉は何時もの様に、先に飛んだ雉の後を追って何時も通りのねぐらに向けて飛んだんじゃ。仲の良かった兄弟じゃがいっぺんに二つとも居なくなるのも寂しいもんじゃな 】

 「幼い犬ですが猟犬と、いくら若鳥でも雄雉が、猟期中に猟場で出っくわした因縁と思います・・・」

 訳の判らない事とお礼を言ってその日の猟を終え、帰途につきました。

 青春の頃の色々な経験は私の人生の尽きる事の無い思い出の始まりになっておりますが、これ以来、何故かこの歳になりましても猟犬が猟場で雉に当り、発砲した後に又出る雉には引き鉄を落とすのを躊躇してしまいます。何時しか弱気なハンターになったものです。

この四国から参りましたポインターは長じて火の玉の様な猟欲の持ち主になり、永く小生と猟を楽しみました。関東より来ましたポインターはその後、雉を噛ま

すと少しはハンドルに乗りやすくなり、強烈な気力を見せつけておりましたが、

2歳弱の頃に和歌山県で開催されました競技会で関東の方の目に止まり無理を言

われましたが、この犬の土俵は小生の元にいるよりも他に有るはずと関東に戻し

ました。

こういうタイプの犬のステークスは当時に関東の方が盛んになりかけており、

割愛を申し込まれたのはブリーダーの方の懇意な方です。その方の若手に持たせ

てやりたいとの事でした。

 この兄弟の様に育てた犬達に対する私の感想は、その後のポインターに対する

視点を決定してしまいました。昔によく言った事ですが、

 ( 時速40Kで3時間ヒートがフリー・フォー・オールの基準だなんて本当

かいな? 競技中に止まる時はポイントか死ぬ時くらいだってな、気合だな? )
 
 何故か本当の様な気がします。日本車の2000CCに対して米国車の7500CCくらいの馬力の違いを如実に見せてくれました。走りきって息をハッハッハと切らしておりましてもすぐに心肺は収まります。ヒートすれば時間が経つと馬力や気力は衰えるのが普通ですが、時間が経てば経つほど燃えてきます。

 1時間や2時間でフラフラになっている犬とは根本的に何かが違うのです。気力の激しさか?猟欲の強さか?はたまた血そのものか? 拙い経験では未だ答えを見出せませんが、小生のポインターに対する基本的な基準はここから始まりました。

 所詮猟犬は愛玩犬では無く、使役犬と私は心得ておりますが(実猟に使われないで、競技会のみの犬では使役犬かもしくは猟犬と言う冠たる名前で呼んで良いのかどうか判りませんが、猟犬の改良や後々の狩猟犬の為に良い始祖犬を作出して頂く事には感謝し、また希望を託しております)、ただの使役犬では決して有りません。私の闊歩する猟場で前方左右を風の様に狩る最高のパートナーです。自分は何の為に生まれて来たのか? 何の為に飼われているのかをしっかりと解かっている様です。

 それでも常に私を騙してくれますが、それも犬との駆け引きで中々楽しいものです。機会が有りましたらまた印象に残った犬などの話を聞いて下さい。


 

 
 
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